30年住宅をこれまでのように、スクラップ&ビルドシステムで、建て替え続ければ、一体どうなるのでしょうか?
我々は常に、住宅ローンの残っている住宅に住むことになります。この意味するところは、サラリーマンが、永久に豊かさを実感することができないということです。ローンが終わったら、建て替えの時期で、直ぐに新しいローンが始まるのですから。サラリーマンの人生は、1軒の家を残して終わりとなります。
住まいをつくる目的は、「家族の幸せ」を実現することです。
住宅会社はこのやり方で、確かに恩恵を受けてきました。しかし、このやり方では、住宅会社にとっては、よいことかもしれませんが、世界でも類を見ないといわれる、急激な人口減少社会が起こりつつある日本の中で、長続きするものではありません。主役であるべき建築主の幸せにつながりません。本来、30年住宅の2倍の60年、あるいは100年住宅をストックとして建てますと、1年当りの建設コストは大幅に低減します。居住コストも大幅に低減します。最近は200年住宅という言葉も頻繁に聞くようになり、好ましい傾向だと思います。それは“ライフサイクルエネルギー”の低減として、地球環境問題にも大いに貢献します。
今後は、フローではない、ストック住宅の建設を目指さなければなりません。世界一長寿命の日本人は、世界一長寿命な住宅に住む権利と、義務があるのはないでしょうか。住宅において、建物としての長期保証が社会的に要求されるようになってきました。2000年4月に施行された、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により、“構造”と“雨漏り”の保証期間が10年となりました。本来は、建築主が適正なメンテナンスを適時に継続して行えば、本来、住宅は10年どころか、もっと長く使用できるものです。住宅は耐久消費財として考えるべきではなく、社会資本として考えるべきものです。
「宇宙船地球号」というシステムが、いわれています。地球上の資源の有限性や、資源の適切な使用を考えに取り入れています。この中においては、廃棄物を無制限に出すことは、決してよい考え方ではないはずです。
環境問題が重要視されるようになってから、「持続可能な発展(Sustainable Development)」という概念が提唱されています。将来の環境や、次世代の利益を損なわない範囲内で、考えなければなりません。
住まいは“第3の皮膚”と呼ばれます(第2の皮膚は衣服)。ひとの健康・生活に大きく影響を及ぼす基本的なものです。その大切な住まいについて、建築主に対して、適正なメンテナンス提案をすること、納得感のある説明をすることが、社会的要請であり、技術屋としての使命です。
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